学長メッセージ
Society 5.0をリードするイノベーション人材の育成へ
令和6年4月1日付で日本大学学長を拝命いたしました大貫進一郎でございます。ここ数年、本学におきましては複数の不祥事が発生し、そのたびに、在学生ならびに保護者のみなさま、本学を巣立った卒業生、さらには各キャンパスで学生と向き合っている教職員に、辛く苦しい思いをさせてしまうこととなりました。また、社会のみなさまにも、多大なるご迷惑をおかけいたしました。ここに、深くお詫びを申し上げます。現在、ムラ社会と評された体制や体質の抜本的な見直し、コンプライアンスの遵守をはじめ、多角的に議論を行い、改善・改革を鋭意進めております。ステークホルダーのみなさまに二度と同じ思いをさせることのないよう、誠実に、またスピード感をもって、取り組んでまいります。
日本大学は、元来、社会の礎をつくり、また新機軸の開拓に挑む人材の育成に、重きをおいてまいりました。学祖である山田顕義は、岩倉使節団による欧米視察からの帰国後、日本の風土にあった法律の整備の必要性を唱え、その教育機関として本学の原型である日本法律学校を創立しました。その後に開かれた各学部も実学を旨としており、現在は16学部86学科、卒業生の総数は126万人を超えております。
本学の何よりの長所は、文系・理系・医歯薬系のありとあらゆる学問分野が<共存>している点にあります。所属する学部・学科で専門性を高められるのはもちろんのこと、周辺分野あるいは関連分野に広く触れることができるのです。いま、社会で求められているのは「イノベーション」を起こせる人材です。H型人材と称されることもありますが、単に自身の専門分野をもつだけでなく、他分野のさまざまな人びととディスカッションをし、またコラボレーションをすることで、これまでにない新しい「もの」「こと」を創っていくことができます。そのためには、<幅の広い知見>と<多様な存在との関わり>が必要です。本学は、認定こども園から大学院までを擁する総合教育機関であり、まさに多様性の宝庫でもあることから、在学中にイノベーションの素地をつくることができる、世界的にも数少ない教育的な特徴をもっていると自負しています。また、現代社会は、現実空間と仮想空間とを高度に融合したSociety 5.0へと歩みを進めつつあります。情報の種類と量の増加に伴い、昨今ではフェイクニュースやディープフェイクも増え、情報の精度を見極める力はさらに重要度を増していますが、ここでも前述の<幅の広い知見>と<多様な存在との関わり>はかならず活きてきます。実際に自ら経験したものほど、強いエビデンスはありません。
こうした本学の特徴をさらに伸ばすべく、私たちは現在、教学DXに取組んでおります。教学情報収集・分析基盤の構築、北米のデファクトスタンダードである学修管理システム(LMS)の全学導入など、学生一人ひとりの学びの実態を把握し、AIの利活用も視野に入れながら豊かなデータに根差した個別最適化を進めております。また、国内に広がるキャンパスだけでなく、実稼働が開始されたニューカッスルキャンパス(オーストラリア)を含め、ICTを活用したボーダレスな教育も企図しております。
私たちは、130年を超える歴史と伝統だけでなく、豊かな教育リソースを活かした国内外でも類のない教学の新機軸を拓きながら、本学の教育理念である「自主創造」を体現してまいります。そして、学生一人ひとりと向き合いながら、「自ら学び」「自ら考え」「自ら道をひらく」ことのできる人材、Society 5.0をリードするイノベーション人材をていねいに育成いたします。
学長
大貫 進一郎