ウェスタンミシガン大学 田中悠理奈さん(法学部)
ウェスタンミシガン大学交換留学報告書
留学先では、主にジェンダー学を受講した。それは私の今までの私なりの苦悩や、疑問、興味全てを照らし合わせて一番興味ある分野だったからだ。実際収穫はとても多かった。日本でジェンダー学を取ったこともあったが、やはりアメリカのジェンダー学は飛躍的に進んでいると自覚させられた。ウエスタンミシガン大学はGender Women Studiesという学部が独立して存在している。その為、LGBTや、メディアにおけるジェンダーなどについて専門的に時間をかけて学ぶことができた。受講できなかったが、ビヨンセただ一人をジェンダー学の観点から学ぶクラスもあった。また、日本でジェンダー学を受講した時、クラスの大半が女性だったことが気になっていた。しかし、アメリカではGender Women Studies という学部名にも関らずクラスの男女比はほぼ半数であった。
また私は、日本大学でとてもお世話になった教授が宗教学を教えていることもあり、宗教学に強い関心がある。私の宗教学に関する知識はからっきしだが、様々な宗教を学ぶことで、国や宗教が違っても、共通して人間として大切なことは何であるか見えてきたような気がした。また宗教学とジェンダー学を同時に考察もした。一神教であるキリスト教信者である方々と、日本を含む多神教の国々についての感想を伺ったこともあった。宗教学の先生に最後の授業で「国が違っても、人間のもつ問題はみんな同じよ」と言われ、本当にそのとおりだと感じた。日本では宗教というと敬遠されるどころか、宗教を信仰していると差別されることも少なくない。人の迷惑も省みず、信仰を強要したり、過激な行為に及んだりすることが良いとは私も言えないが、内実をよく知らずに攻撃してしまうのは結局のところ、排他的な社会を作っている一因にもなっているのではないか。無理に他者に合わせずとも、お互いの違いを認めつつ、心地よい関係性を築ける社会になっていけばいいと思う。
最後になるが、やはり留学で得たものは多い。成績もオールAとはいかなかったが、自分なりに一生懸命頑張ったので満足している。アメリカでは出される課題も多かったため、コツコツと勉強する癖もついたように思う。自分と気の合う方々と知り合うこともできた。進路に関しても、留学前は就職を考えていたが、アメリカで出会った教授や日本でお世話になった教授の強い勧めで大学院に進み社会学を研究することにした。私は本当に周りの人に恵まれている。彼らを含めて、下に兄妹がまだ二人いて家計が火の車にも関わらず大学院進学を許可してくれた両親へこの場で感謝したい。未だ未熟者で分かっていないことも多く、沢山の方々に迷惑をかけている。しかし自分がこれまでに学んだこと、そしてこれから学ぶであろうことを生かし、いつか社会で苦しむ人たちのサポートができたら本望である。それが、今まで頂いたご恩を返すことだと信じている。
2017年4月2日
先週は後期に入ってから久しぶりに落ち着いたので、ダウンタウンに行って来ました。カフェに行きコーヒーを飲んだ後、博物館でプラネタリウムを見たり、公園をぶらりと散歩したりとリラックスした一日を過ごすことが出来ました。こうして、駅の方に来るにもバスを使わなければならず、アメリカでの生活は考えていたよりも大変なことを再度実感します。しかし、こういった事は実際に現地で生活してみないと分からない為、留学は本当に貴重な経験となりました。人によっては日本より肌に合うから編入したい、という方や将来はアメリカに移住したいという方もいるので、面白いです。
最後に、この大学の魅力を語ろうと思います。まずウェスタンミシガン大学は生徒数が多く、様々な国から留学生が集っています。少し訛りのある英語や、多種多様な文化に触れることもできます。またこれはミシガン州という地方の特徴かもしれませんが、温厚な方々が多くとても親切にして下さいます。施設が充実しており古い校舎もあるものの、広々としていて、綺麗にされています。イベントも多くあり、その多くが学生だと無料や、半額で参加できます。食料品店は遠いですが、無料のバスが出ているのでそれ程困ることはないでしょう。寮費やダイニングの費用なども他大学に比べるとお手頃な価格なので、費用を気にしている方にもお勧めです。
都心の方が良いという方もいますが、少なくとも私は自然に囲まれたこの土地がとても好きでした。この土地で過ごした約八か月間は四年間の大学生活を振り返ることができる、締めのようなものでした。まだあと四週間近くあるので気は抜かず、悔いを残さぬよう精一杯励みます。以下、写真になります。
2017年3月3日
寒暖差が激しくも春の陽気を日々の合間に感じる頃合となってきました。ミシガン州はミシガン湖の影響か曇り空の日が多く、時折顔を覗かせる太陽の光に有難みを感じます。雪もすっかり溶け、動物たちも再び見かけるようになりました。リスがお尻を向けて土を掘っている姿や、所々から聞こえる変わった鳥の鳴き声に癒されています。春になると共に、自分にとって一つ大きな出来事もありました。それは、帰国後の進路のことです。かなり悩みましたが、 日本にいる方々の助言や、こちらで経験したことを踏まえて決めました。この大学で一生懸命に学んだ経験を自信とし、また新しく踏み出せそうです。
今回は短めの報告となってしまい申し訳ありません。残り二か月、留学生活もラストスパートに入りました。帰国までの一日一日を大切に、惜しみなく過ごしていきます。以下、写真になります。
2017年2月2日
春学期も始まったと思いきや、既に二月ということで時間の経過に驚きを隠せません。帰国の日も続々と迫っており、日本の食事が恋しいので早く帰りたいような、かといって未だ十分に英語ができない自分への歯痒さと、この土地に対する愛着感の間で板挟みになり、複雑な心境です。トランプ政権になったことで、日本にいる方達から心配して頂いたりもしますが、現在のところ目に見えるような影響は全くありません。学校自体は多くの留学生に快く門戸を開く方針を貫くようなので、次年度の留学生にも安心して頂きたいです。
今学期私は、ジェンダー学を二つ、英語と宗教学を一つずつ取りました。やはりジェンダー学は面白く、こちらにはGender Women Study というジェンダー学専門の学部があるので、深く掘り下げて学ぶことができます。日本ではどうしても日本国内のジェンダー学に偏りがちでしたが、アメリカでは人種、宗教、文化が多岐に渡る為か、様々な観点からジェンダー学を学びます。Intersexionalityは特に興味深いと感じた概念です。この言葉の語源はIntersection(交差点)から来ており、社会や文化といった環境の中で抑圧されている差別分野(人種、性的指向、国籍、宗教など)が独立して機能している訳ではなく、相互に関係し合っていると考えた社会理論です。
このように、アメリカに来なければ知ることが難しかっただろう理論を学んだ経験は、今後の学習にも大いに役立つでしょう。例えばこちらでは多くのリーディングが予習として出されます。他の宿題と重なった場合、全て読めず大切な所だけ拾い読みする事もありますが、英語の文章に慣れておくという経験は、帰国後も英語で資料収集をする時などに有益かと思います。
生活面ではこちらに来た当初に出会ったアメリカ人の学生と変わらず仲良くさせて頂いております。日本が大好きな彼とは読書やアニメなどの趣味も合い、毎週金曜日に日本語と英語のアニメを交互に観ています。彼は今年の夏から日本に来ることが決まっていて帰国後もまた交流できると思うと嬉しい限りです。
寒暖差が激しく、現地の方でさえも体調を崩す方が続発しています。体調が悪い時は無理せず休み、残り3ヶ月の留学生活も有意義に過ごしていきたいです。
2017年1月4日
明けましておめでとうございます。こちらは前期の試験も終了し、冬休みに入りました。寮が閉まり、旅行に出かける方々が多い中、私は冬休み中に作業したいこともあるためキャンパス近くに住む知り合いの方の家に泊まっております。あっという間に前期が終わりましたが、思い返してみれば怒涛の4か月間でした。最初は左右も分からず、戸惑い焦ることもありましたがようやくこちらでの生活に慣れてきました。
前期の試験は想像以上に身が堪え、途中挫折しかけた時もありましたが日本に住む大切な方々やこちらで出来た友達に励まされ、最後まで終えることができ、現在は達成感に浸っております。テスト期間中は毎週の課題を提出していくのと同時にプレゼンテーションの準備や、テスト勉強を並行して行わなければなりませんでした。私の場合、10分間のプレゼンテーションを行い、10枚のレポートを提出しなければならなかった為、中々大変でした。しかしようやく全てが終わり課題の提出と同時に、英語が未熟な私に懇切丁寧に教えてくださった教授に感謝の気持ちを伝えたところ“I admired your courage and perseverance during this class, even when the course readings were difficult for you.” とお返事を頂き大変嬉しく思いました。1月9日から後期の授業が始まり、また忙しい毎日を送ることが予測されるため、息抜きしながらも最近気に掛かっていた事などを調べております。
WMUに留学してからというもの、勉学だけでなく、改めて自分を見直すことができています。卒業を伸ばして叶えた留学でしたが、今の時期だったからこそ学べることが多くあり、このタイミングがベストだったのだと改めて思います。2年生の交換留学試験で私は一度失敗していますが、あの時諦めなかったからこそ今があります。是非、留学を考えている方々も途中で諦めずに頑張って頂きたいです。
クリスマスはハウスメイトの方行きつけの教会と親戚の集まりにご招待頂きました。また大晦日とお正月も、こちらに長く住んでいる日本人の方の集まりにご招待頂いて紅白歌合戦を観ながら、手巻き寿司やおせち料理を頂くなどしてとても幸せな時間を過ごすことが出来ました。最近は特に日本の食事が恋しく、余計に身に沁みております。
冬休み中にしっかりと休み、後期の授業に向けてエネルギーを蓄え、また誠心誠意頑張ります。
2016年12月1日
こちらに来た当初は、「英語を少しでも多く話すために沢山の人と関わらなければならない。」と自分をどこかで追い詰めていました。勿論今でも、英語を話す機会は積極的に作ろうと励んでいますが、最近ではそのような自分が少し懐かしく感じます。おそらく、どの留学生も感じる大きな不安の一つかと思います。しかし、周りの日本人を見ていてやはり感じるのは、各々に合う、人との付き合い方があるということです。
私は主にラングエージパートナー(こちらで日本語を専攻している学生とパートナーを組むプログラム)や、オリエンテーションで知り合った方、インターナショナルクラブの方と仲良くさせて頂いています。ある人は、同じフロアの方の友達を通じて、グループで行動していたりジャパンクラブの方々やルームメイトと行動を共にしていたり、と様々です。勿論、最初は努力が必要でしょう。自分が使える英語で相手に思いを伝えることは決して容易ではありません。積極的に様々な方と話して、その中で気が合い、上手くやっていける方と過ごしていけばいいかと思います。それこそウェスタンミシガン大学は人が沢山いるので、積極的に動けば必ず合う人が見つかります。今後留学を考えている方の中で「日本人とばかりいるようなことになったら、どうしよう」とか「友達できるだろうか」とか「ルームメイトと上手くやれるだろうか」と不安になって留学をとどまっている方がいたら、人付き合いが少々苦手な私でもうまくやれているので大丈夫だと、伝えたいです。留学する方の全てが外交的な訳ではありませんし、現地の方でも内向的な方は沢山います。
実は私も周りの日本人とつい比べてしまい落ち込んだりすることもあります。周りは留学を志して、外交的で、そして実際に試験を突破して来ている意識の高い優秀な方ばかりです。しかし、それでも英語が未熟な私を「会おうよ」と誘ってくださり、私の為に貴重な時間を割いてくださる現地の方がいるのは本当に有り難いことだと思います。
暗い面ばかり見つめるのではなく、明るい面に集中して過ごすようにしたいです。アメリカに来てからというもの、忙しい日常でつい本質を忘れがちでしたが、場所や使う言語が変わっても決して大切なことは変わらないということを教えて頂きました。
今回の報告書はいつもと内容が異なり私の意見を主に書かせて頂いた為、ウェスタンミシガン大学での生活を知りたい方には申し訳ないです。けれど少しでも今後留学を考えている方の不安を取り除ければと思います。次回の報告書はまたこちらでの生活を書かせて頂くのでよろしくお願い致します。
以下、写真になります。少しでもこちらでの生活が伝わるといいです。
2016年11月1日
こちらも本格的に冬が存在感を増してきました。秋は一番好きな季節ですが実質1ヶ月半程しかなく、冬は11月から3月一杯までということで少々憂えております。
ミッドタームも終えて、前期も残り半分となりました。本日まで授業を受講してきて印象に残り日本の皆さんとシェアしたい知識を以下に書いてみようと思います。
今回は養子縁組についてです。私がこちらに来てまず驚いたのは、アメリカではいかに養子縁組が受け入れられているかという事です。現在の日本では、産みの親が何らかの事情で育てることのできない子どもの8割以上が施設で育ち、養子縁組を経て一般家庭に引き取られているのはわずか1%、400人未満です。(2012現在)
これらの事から総じて日本はアメリカに比べ里親制度が遅れていることが分かります。
なかなか解決が難しい問題ですが、知識を得て考察することは決して無駄にはなりません。価値観が多様化している現在、よりよい、生きやすい社会を創造することは世界中の大きな課題です。私もそのような社会を目にする日が近いことを願って止みません。
ここからは日常生活の報告となります。英語の上達具合ですが、残念ながら未だ自分で満足できるレベルには達しておりません。正直焦りもあります。しかし最初は1ページ3時間掛けていたペーパーを2時間半で仕上げることが出来るようになったり、会話でも聞き取れる部分が増えたり、小さな達成感を感じています。こうした小さな自信も次のステップへ進むために大事にしていきたいです。
ウェスタンミシガン大学は規模が大きく、開催されるイベントが多くあります。アメフトの試合や劇、コンサート、レクチャー、マジックショーなど学生は優遇され無料や定価より大幅に安く体験することができます。この点も大きな魅力の一つです。また自然に囲まれたキャンパスの為、リスが多くいるのですが、その他にもダチョウが歩道を悠長に歩いていたり、2匹の鹿が全速力で目の前を駆けて行ったり、ゴミ箱の穴からアライグマがしっぽを覗かせていたりしてとても癒されます。
日本の食事はとても恋しいですし(残念なことに、私はこちらの牛乳を飲むと必ずお腹を壊します。笑)、課題も多く苦しくなることもありますがそれらを打ち消し余るほどにとても充実した留学となっています。以下、写真になります。
2016年10月2日
ウェスタンミシガン大学に来てから一か月が経ちました。この一か月間、必死で毎日を過ごしていたため、とても早く感じます。ここ一週間の間に、気温は十度近くまで下がり早くも秋を通り過ごして冬の寒さが肌に染みています。気温の変化と疲れで体調を崩しましたが、早めの対策とたっぷりの睡眠でなんとか回復しました。
授業も始まりました。私は社会学系の授業(ジェンダー学やソーシャルプロブレム)の他に宗教学も取っていますが、どの授業も大変興味深いです。宿題は日本の授業と比較にならない程多く、毎日課題に追われています。念のため交換留学生ということは先生方に伝えておりますが、その立場に甘んじてしまうことは良くないので、当たり前ですが課題などは現地の生徒と同じように提出しております。しかし現地の生徒が一時間で終わる宿題を、私がすると四時間かそれ以上かかってしまうことも事実です。
勉強ばかりしていては、留学の意味が半減してしまうので勿論現地の人々との交流にも力を入れています。アメリカ人の印象といえば堂々としており、自信があり、自己主張が激しいイメージでしたが決してそんな事はありません。少なくともミシガン州の方々はとても温和な性格で自己主張しながらも気を使ってくださいます。シャイな方も勿論沢山いらっしゃいます。慎重にしていても、自分のイメージがどれだけマスメディアに踊らされているか実感した一つの良い経験となりました。そして、こちらで生活をしていて初めてアメリカ、日本を客観的に比較できるようにもなりました。日々の生活の中に隠されている問題点を見つけ考察することは、社会学を学ぶ者としてはとても楽しい作業です。
クラブは宗教学系のサークルに入りました。宗教学に興味を持ち始めたのは大学の恩師のお陰なのですが、日本では昨今「宗教」というと、つい警戒心を抱いてしまう分野となってしまいました。それはおそらく地下鉄サリン事件や悪質な宗教勧誘からくるものだと思いますし、私も同じく警戒心を抱き自分とは関係ないもの、と思っておりましたが、慎重に学べば私たちの生活にどれだけ宗教が身近に存在するか、また、社会学との結びつきの深さを実感することができます。 日々好奇心が尽きないため勉強することは決して苦ではなく、楽しくて仕方ありません。いつかは勉強が苦しいものと思っていた時期もありましたが、それは日ごろの環境のなかで作られてしまった概念であるように思います。いつか社会に居場所を見いだせない子供たちに、私が学ばせて頂いたことを教え手助けし、子供たちからも学ばせて頂くのが私の夢なのだと強く思います。その為に今は自分が興味ある分野を一生懸命学び、一日一日の生活でも感謝を忘れず噛みしめて過ごしたいです。
心なしか日本語が少々下手になった気がしてなりませんが(笑)、これからも頑張りますのでどうぞ宜しくお願い致します。