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留学・国際交流

ストックホルム大学 寺島尚志さん(法学部)

ストックホルム大学交換留学報告書

私にとってまさに夢の一年が終わりを告げたのは2013年6月26日、スウェーデンから日本に帰国した日である。ノーベル賞の記念講演の場としても使われるストックホルム大学は、創立1878年と歴史も長く、世界大学ランキングでも毎年100位以内に入る非常にレベルの高いスウェーデンの大学である。スウェーデンは日本のように四季の変化に富み、現地の人でさえ鬱になると言われる冬は厳しく、日中に太陽はほとんど顔を出さない。反対に、夏は北部で白夜も観測されるほど日照時間は長く、美しい緑と透明感のある太陽光が街を暖かく包み込む。このような自然豊かな国、それがスウェーデンである。1年間という長いようで短い交換留学生活が終わってしまった現在、非常に物寂しい想いでこの交換留学報告書を書き進めているが、この報告書によってまた一つ区切りをつけ、次なる一歩への推進力としたい。
単に留学というと、多くの人は留学先にアメリカやイギリスなどの英語圏を考えがちかもしれない。スウェーデン語が母国語であるスウェーデンを敢えて選ぶ理由は何か。
第一のキーワードは、“第二言語としての英語”である。現在、世界では英語を母語とする人口よりも、第二言語として使用する人口の割合の方が圧倒的に大きい。イギリスの言語学者、デイヴィッド・クリスタル氏の推計によれば、2006年の時点で世界の英語話者の70%は非ネイティブスピーカーに相当するそうだ。これは、もはや英語がネイティブだけの言語ではなくなってきているということを意味し、同時に、非ネイティブ同士が英語でコミュニケーションをする機会が格段に増えているといえよう。そのような状況において、事実上世界共通語である英語をより実用的に運用するためには、非英語圏の人々が第二言語として英語を話す際に生じる母語由来の訛りに慣れておくことが今後重要になってくるのではないだろうか。つまり、ネイティブスピーカーのみならず、ヨーロッパを始め、世界中の人々と英語を用いてコミュニケーションをする必要性があるのだ。
次に、人種・文化の多様性が第二のキーワードとなる。小学校から大学院までの授業料が税金でまかなわれるスウェーデンでは、欧州連合に住む人々でさえもスウェーデンに住む人々と同じように無料で学士や修士を取得できるため、世界はもちろん、ヨーロッパ各国からも毎年数多くの学生が集まる。そのような常に多種多様な人々が活発に交流を続けている場所に1年間身を置いて生活することで、複眼的思考能力を向上、そして、日本では得られない価値観も身につけることができるはずである。以上のように、自分の専攻分野だけでなく、母語に由来する英語の訛り、そして、人種・文化の多様性を同時に学ぶのに最適な場所がスウェーデンであると考え、ストックホルム大学の交換留学を志望した。余談ではあるが、2013年にEF Education First 発表した非英語圏を対象とする英語習熟度ランキングをみると、スウェーデンは他の北欧諸国と肩を並べつつも一位にランクイン(ちなみに日本は同ランキングで26位)している。実際に現地で生活を始めると、スウェーデン人の英語力の高さには驚かされた。フランス人やドイツ人などの友達と比較しても、彼らは卓越した自然な表現と綺麗なアクセントで英語を話しているのだ。また、スウェーデンでは、基本的に街中に溢れる標識は全てスウェーデン語で書かれているが、私が英語で人々に道を尋ねると、誰しも愛想良く綺麗な英語で丁寧に説明してくれた。
そのスウェーデンの多様性の中で学んだことは数え切れないが、学習面では上述のように母語に由来する独特の訛りに加え、ネイティブスピーカーの訛りにも慣れることが出来たことは私にとって非常に有意義であった。面白いエピソードが一つある。私の友人であるロンドン東部出身のイギリス人は基本的に英語を話すとき、とりわけ、”t”を発音しない。いわゆる、Cockney方言の一種である。例えば、”Forty”はカナカナで表記すると「フォーイー」のように聞こえ、”Party”は「パーイー」と聞こえる。まだ彼に出会ってそれほど時間の経たないころ、私たちがエストニア共和国の首都、タリンへ二人で旅行に行ったときのことである。その日は世界遺産にも登録されている旧市街を散策し、トームペア城の壮大な城壁や城塞、帝政ロシア時代に建てられたロシア正教のアレクサンダー・ネフスキー大聖堂などを見て回った。時刻も夕方に近づき、お互いにそろそろ疲れも見え始めたそのとき、彼は突然「マイフィーハー」と私に叫んだ。私はそのとき全くその意味を理解できず、失礼ながらも内心で何か新しいギャグかなと思ったほどである。英語で表記すると”My feet hart.”となり、足が痛いという意味となる。文字に起こせば理解出来ても、咄嗟に”t”を発音せずに話しかけられたため、混乱してしまったのだ。日本語にも大阪弁などの訛りがあるように、ネイティブスピーカーが話す英語にも数多くの訛りが存在する。友人との会話を通して、各国における母語由来の訛りも含め、多様なネイティブの訛りを体感して学ぶことができた経験は、ストックホルム大学で選択した授業以上に実践的語学力向上へと大きく貢献したように思う。私自身、今回の留学でおおよそ20ヶ国以上の人々と友達になり、彼らと英語を用いてコミュニケーションをとった結果、英語のリスニング力は渡航前よりもかなり向上したと感じている。
次に、スウェーデンにおいて日々生活していく中で学んだことを大まかに三つに分け、紹介したい。まず一つ目は、人間に国籍や人種の壁はないということだ。もちろん、各国には独自の文化があり、それに準じて人々も生活しているわけであるが、人として根源的な部分は日本人も外国人も基本的に一緒であると彼らとの生活を通して感じた。例えば、授業後に友人たちとバーに飲みに行ったとき、彼らの物事に対する考え方こそ私と異なるものの、他愛の無い会話の話題や、人生の悩みなど、日本人と通ずるものが数多くあったのを覚えている。人種に壁はないということを理解し、お互いに意思疎通ができる言語さえ話すことができれば、コミュニケーションをとる際に何も恐れることはない。
二つ目に、自分の探求したいものを追い求めるべきであるということだ。これはスウェーデン人の基本的な生き方でもある。日本では高校卒業後、大学への進学というのが一般的な進路であるが、スウェーデンでは高校卒業後、働きたい人は働き、勉強したい人は大学に進学する。つまり、スウェーデン社会では他者との対比より、自己の意志に重きが置かれる傾向にあるのだ。さらに、周りの意見に左右されない彼らは、日本のように上下関係を重視するということはほとんどなく、平等性を重視する。日本によくある男子寮、女子寮という区別もスウェーデンには存在しない。私自身もそのような彼らの生き方に触発され、一度しかない自分の人生において自分の探求したいものをできる限り突き詰めていこうと心に決めた。
最後に、人間の本質は基本的に同じであると前述したが、欧州ならではの文化の多様性を体感できたことを付記しておきたい。ヨーロッパでは、沢山の国が陸を通して隣接し、一度国境を越えればそこは異国の地である。友人との交流を通して、各国の人々がそれぞれ築いてきた文化を学び、共有し、視野を広げることができたことは、今後の私の人生にとって大きな糧となることと確信している。
今回の留学によって近年話題となっている“グローバル人”へのステップを大きく踏み出すことができたように思う。今後の進路としては海外の大学院を検討しており、そこでさらに自分自身を成長させ、真の“グローバル人”として活躍する力量を獲得したい。

毎週月曜日には市内のジャズクラブに足を運び、現地のミュージシャンと共にセッションしていた。この写真は、そのときの一枚である。ここで出会った人々とは今もSNS を通して繋がっており、時折連絡を取り合う仲である。

謝辞
このような交換留学という素晴らしい機会を与えてくださった日本大学に心より感謝申し上げます。

2012年10月3日

スウェーデンといえばIKEA。オリエンテーションウィークでは留学生を対象に大学から無料シャトルバスが提供されていました。必要なものは何でも揃います。

8月26日にストックホルムに到着し、既に1か月が過ぎました。到着当初は美しいスウェーデンの夏の名残を楽しんでおりましたが、そろそろ秋も深まり木々が色を変え始めています。ひとたび外に出ると表記が全てスウェーデン語であるため、最初は右も左も分からない状態でしたが、この頃になってやっとそれらが何を意味しているのか分かるようになってきました。スウェーデン語の単語は英語と似ているものも多く、例えば英語でbusはスウェーデン語でbussです。そして、基本的にスウェーデン人は英語を非常に綺麗に話すため、分からないことを英語で尋ねれば何でも親切に教えてくれるため心配はいりません。また、到着して一週間では生活必需品などを街で買い揃え、オリエンテーションを通して出来た友達と共にストックホルム市街や旧市街を観光しました。食事に関しても、どれもとても美味しいので不自由なく生活出来ています。しかし、高福祉高負担で知られるスウェーデンだけあり、小さいクロワッサンが日本円で350円近くするなど物価の高さを肌で感じます。科目の履修登録は到着後すぐに行い、2週目からは授業が始まりました。

Excursionの際に撮った一枚です。ストックホルム中心部からバスで20 分くらいでしたが、非常にのどかな風景が広がっています。

日本語で森の墓地と訳されるSkogskyrkogården。この写真の奥には沢山のお墓があるのですが、その空気がとても独特で不思議な感覚に陥りました。

・学習
現在受講しているSwedish Geographyではスウェーデンの地理やそれに関わる歴史などを勉強しています。授業内容にExcursion も全2回あり、この前はチャーターされたバスを用いてストックホルムの教会や、歴史的名所などを教授の解説と共に巡ってきました。昨日もグループワークの課題としてユネスコ世界遺産にも登録されているSkogskyrkogården へグループメンバーと足を運び、実際に現場で働いている人に質問をし、プレゼンテーションで何を発表するか決めてきたところです。授業はSeminarとLecture形式に別れており、Seminarはプレゼンテーションやディスカッション、Lectureは教授による講義が行われます。プレゼンテーションは全9回ある授業のうち2回、ディスカッション3回で、議論も非常に活発に行われているため常に気を緩めることはできませんが、これがまさに僕が求めていた授業スタイルであるため、大変でも有意義な時間を過ごすことができています。今日は明日提出期限であるエッセイを仕上げているところです。次の授業では、決められたパートナーのエッセイを事前に読み、授業中に先生と共に相手にフィードバックすることになっています。自分だけではなく、他の生徒のエッセイも読み、かつコメントしなければならないので責任重大です。
授業のスケジュールやアナウンスはMondoと呼ばれるストックホルム大学が作成したウェブサイトで確認できます。各人にアカウントが支給され、課題やエッセイの提出もそのウェブ上で行います。
英語に関しては、時に聞き取り難いことがあり、危機感をもって今必死に勉強しています。TOEFL でアカデミックな英語を勉強していたとはいえ、ディスカッションで自分の言いたい要点を瞬時に英語でまとめることはまだまだ難しく感じます。さらに、各国から留学生が集うことから、当然、母国語に由来する独特のなまりが混じっており、それを完璧に聞き取り、理解することも自分にとって当面の課題となっています。特にフランス人とスペイン人、イタリア人のなまりは強いように感じます。一方で、ほとんどの若いスウェーデン人はアメリカ人のような綺麗な発音と文法で英語を喋ります。これはこちらでの幼少からの英語教育によるものと、上記でも述べたようにスウェーデン語と英語は単語や文法レベルである程度似ているところがあるからだと思います。

ストックホルムは島から成り立つ都市ですので、このように街の至る所に水路が入り組んでいます。また、魔女の宅急便のロケ地としても有名です。

・生活
ここ数日、気温も下がり少々肌寒くなってきましたが、紅葉も見頃で、まだまだ美しいスウェーデンを堪能しています。休日など空き時間があるときはこちらで出来た友達とカフェに行ってお話をしたり(スウェーデン語でCoffee breakをFikaと呼び、彼らはこの文化を非常に大事にしています)、ストックホルム市街の観光地や博物館を巡ったりしています。また、今週はストックホルムジャズフェスティバルが開催されています。僕の好きなアーティストの一人であるジャズピアニストの上原ひろみさんが今回出演されるので、早速インターネットでチケットを予約し、今か今かと待ちわびているところです。こちらでは音楽関連のチケット料金は日本に比べて非常に安いので、音楽好きの僕にはたまりません。上述の上原さんのコンサートは180SEK、日本円で約1980円(当時のレート)でした。先日、市街でジャズクラブも発見したので今度そちらにも行ってみようと考えています。

スウェーデン人の毎日に欠かせないFika。僕も日本の某コーヒーチェーン店で2年ほどアルバイトをしておりましたが、日本のものと比較してもスウェーデンのコーヒーのクオリティは非常に高いと思います。こちらのお店では繁忙時でもラテアートはもちろん、非常に綺麗なフォームミルクでラテを作ってくれます。さすが年間一人当たりのコーヒー消費量が世界6位の国だけあります。一年間に一人799杯!単純計算で一日に2.1杯以上飲むことになります。ちなみに日本は29位だそうです。
以上のように、英語には依然として課題も残りますが、学習面、生活面共に非常に充実しております。